コア-マントル境界条件下における鉄-ケイ酸塩の反応

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12440120
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 八木 健彦 東京大学, 物性研究所, 教授 (20126189)
• 研究分担者: 小野 重明 東京大学, 物性研究所, 助手 (20313116)
• キーワード: コア-マントル境界 / ケイ酸塩 / 溶融鉄 / 高圧実験

研究概要

本研究は、地球のコア-マントル境界の実態の解明を目的として、100GPa(100万気圧)領域下におけるケイ酸塩と溶融鉄の反応実験を行い、反応生成物の構造や密度、および元素の分配を明らかにしようとするものである。この目的のために、レーザー加熱ダイヤモンドアンビル装置で反応させた鉄とケイ酸塩の反応生成物を高圧下のままX線回折により調べるとともに、回収試料を分析透過電子顕微鏡を用いて観察する。これらの実験を元に、コア-マントル境界で存在すると考えられる鉄酸化物の構造や密度、元素分配等を解明し、最近急激に蓄積されつつある地震波の情報と併せて、地球のコア-マントル境界の実体の解明をめざす。
本年度はまず、筑波のフォトンファクトリー(PF)、BL13のハッチ内に建設したレーザー加熱ダイヤモンドアンビル装置の温度測定部分に改良を加え、温度測定の空間分解能をあげて加熱領域の温度分布をより正確に測れるようにした。設備備品費は、この温度測定に用いるCCDカメラヘッドと分光器の更新に使われた。まだ温度計算のソフトが完成していないため、正確な比較は難しいが、従来のものに比べて高いSN比での測定が可能になり、より正確な温度測定が出きるようになると考えられる。実験は、下部マントルの主要ケイ酸塩相と考えられるペロフスカイト構造のMgSiO_3端成分の粉末中に純鉄を埋め込み、所定の圧力まで加圧した後レーザーでさまざまな温度まで加熱し、圧力をかけたままの状態と1気圧に回収した後X線回折実験を行い、生成相を明らかにした。まだ予備実験の段階であるが、温度により明らかに生成相が異なる様子が観察されている。今後回収試料を分析電顕により観察して、反応の様子や生成物の構造、組成を明らかにする予定である。

研究成果

• [文献書誌] T.Kondo: "Phase transitions of MnO to 137 GPa"J.Appl.Phys.. 87. 4153-4159 (2000)
• [文献書誌] T.Yagi: "Effect of Hydrostaticity on the Phase Transformation of Cristobalite"Physics Meets Minerology" Aoki, Syono and Hemley eds, Cambridge University Press. 242-255 (2000)
• [文献書誌] M.Hasegawa: "Stability and compression behaviour of icosahedral Zn-Mg-Y quasicrystal under high pressures up to 70 GPa"Philogophical Magazine A. 80. 1769-1778 (2000)
• [文献書誌] H.Hirai: "Methane Hydrate Behavior under High Pressure"J.Phys.Chem.B. 104. 1429-1433 (2000)
• [文献書誌] A.Kubo: "Compressibility of Mg0.9Al_<0.2>Si_<0.9>O_3 perovskite"Proc.Japan.Acad.. 76. 103-107 (2000)
• [文献書誌] K.Oguri: "Post-Garnet Transition in a Natural Pyrope : a multi-anvil study based on in situ X-ray diffraction and transmission electron microscopy"Phys.Earth Planer Inter.. 122. 175-186 (2000)
• [文献書誌] N.Miyajima: "A new host phase of aluminium and potassium in the Earth's lower mantle "Am.Mineral. (in press).