本研究は、地球のコアーマントル境界の実態の解明を目的として、100GPa(100万気圧)領域下におけるケイ酸塩と溶融鉄の反応実験を行い、反応生成物の構造や密度、および元素の分配を明らかにしょうとするものである。この目的のために、レーザー加熱ダイヤモンドアンビル装置で反応させた鉄とケイ酸塩の反応生成物を高圧下のままX線回折により調べるとともに、回収試料を分析透過電子顕微鏡を用いて観察する。これらの実験を元に、コアーマントル境界で存在すると考えられる鉄酸化物の構造や密度、元素分配等を解明し、最近急激に蓄積されつつある地震波の情報と併せて、地球のコアーマントル境界の実体の解明をめざす。 本年度は昨年度に引き続き筑波のフォトンファクトリー(PF)、BL13のハッチ内に建設したレーザー加熱ダイヤモンドアンビル装置を用いて、一つは、下部マントルの大部分を占める鉱物と考えられているケイ酸塩ペロフスカイトにコアーマントル境界条件下でCaがどの程度入るかを明らかにすべくダイオプサイドを、またもうひとつはFe-FeO系を、いずれもメガバール領域まで加圧してのその場観察実験が行われた。これらの実験を通して、レーザー加熱の安定性や一様性にまだ問題のあることが明らかになり、それを解決すべくスパッター装置を導入して、試料にレーザー光を安定して吸収するレニウム膜を付ける技術の開発を行った。まだ予備的な段階ではあるが、試料が相転移を起こしても従来よりずっと安定して加熱が可能なことが明らかになっており、今後この手法を用いてさらに詳しい実験を積み重ねる予定である。
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