研究概要 |
1.大気重力波は,運動量の鉛直輸送を担い,大気大循環に重要な役割を果たすと考えられている.各種地上観測や人工衛星観測により,陸上や規模の大きな重力波特性は明らかになってきたものの,海洋上小規模擾乱の実態はいまだ不明である.前年度本研究では,東大海洋研の白鳳丸にてラジオゾンデを打ち上げ,太平洋中部の赤道を含む28N〜48Sの70度以上の広い緯度領域の成層圏微細構造をほぼ1度ごとに観測することに成功した.観測期間は2001年11月27日〜12月25日のほぼ1ヶ月.国際重力波プロジェクトの解析手法に合わせ,小規模擾乱の鉛直波数スペクトル,運動・位置エネルギー解析を行った.この観測では、熱帯から亜熱帯にかけてきれいな波束が捉えられていた。今年度は、重力波理論を駆使した詳細な解析を行ったところ、北半球亜熱帯収束帯での対流活動を起源とする波長1800kmの慣性重力波と特定することができた。重力波の南向き群速度と船の進行速度がほぼ一致したために約一週間に亘り同じ波束を捉えるのに成功したことがわかった。この研究成果は、各関連国際会議で発表し、論文にまとめ、JGRに投稿した。 2.平成12年度に購入,整備したヨーロッパ中期予報センターの1979〜1993年の15年分の再解析気候データを用いて,これまで殆ど解析のなされていない南北両極の成層圏極渦周辺擾乱の解析を前年度に引き続き行った.前年度は2次元スペクトル解析、ラグ相関解析、コンポジット解析などを行って、極夜ジェット付近で正の極大となるポテンシャル渦度の南北勾配に捕捉された小規模波動の存在を示すことができた。この内容は今年度JGRに投稿、印刷予定である。今年度は、その励起源を調べるため、3次元EPフラックス解析を行った。その結果、1993年に研究代表者等により発見されたほぼ同じ空間スケールをもつ中緯度対流圏界面に捕捉された中間規模波動と深く関連することがわかった。すなわち、中間規模波動と極渦捕捉波によるジオポテンシャル高度擾乱の位相が西に傾いたとき、捕捉波は増幅する様子が捉えられた。この関連は、中間規模波動と極渦捕捉波の卓越経度帯と季節がほぼ一致することからも強く示唆される。
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