研究課題
基盤研究(B)
赤道域においては積雲対流が極めて活発であり、これにより励起される大気波動が上方伝搬して下層・中層大気の循環に大きな影響を与え、さらに熱圏へのエネルギー輸送においても大きな働きをなす。本研究では時間空間サンプリングの限られる「観測」だけでは明らかにできないこのような過程を解明するために、まずこれまでに蓄積された観測データを幅広く活用するとともに、新たな高精度観測をインドネシア域で行い、これらを用いてデータ同化手法をもちいた数値モデリングを行うことで得られる4次元データセットを観測と詳細に比較することで観測と数値モデルの有機的結合をはかり、積雲対流と大気波動の詳細なメカニズムを明らかにした。まず、高精度水蒸気ゾンデ観測をインドネシアにて行うことで、対流圏界面付近の微量な水蒸気量の変動を明らかにし、積雲対流に伴う赤道域の物質輸送を明らかにした。さらに、大気光イメージング観測をインドネシア域で1年以上にわたって行うことで、赤道域の中間圏界面付近の小スケール重力波の年周変化を世界で初めて明らかにし、積雲対流の水平分布が大きな影響を与えることを示した。さらに長期間のMLT領域レーダー観測の結果を解析して衛星データと比較することで、赤道域中間圏界面の季節内振動と下層起源の大気波動の関係を明らかにした。さらに観測データを取り込んだ3次元数値モデルを用いて、積雲対流が励起する大気重力波が中間圏界面領域まで伝搬して砕波する詳細を初めて明らかにし、大気光イメージャ観測の結果を詳細に比較検討することで、中間圏界面での重力波の励起・伝搬・砕波と大気不安定構造のメカニズムを明らかにした。今後、モデルの広域化・精密化をはかるとともに、新たな衛星観測なども取り込むことで大気波動の下層・中層大気内での全地球的なインパクトの研究に発展できるものと期待される。
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