研究課題
基盤研究(B)
南極ドームふじ氷床深層コアに含まれるダストについて、その粒径別数濃度を2800のサンプルについて行い、過去32万年間のダストデータを100年から200年の時間分解能で得た。数十万年という時間スケールでの時間分解能としては、これまでに例を見ない高時間分解能のデータセットである。このデータセットを用いて、放射伝達モデルを用いて、過去32万年にわたるダストの直接放射強制力の変動を求めた。ここでは、ダスト、硫酸エアロゾル、海塩、その他の水溶性エアロゾルに対してエアロゾル光学モデルを設定し、放射強制力を検討した。この結果、エアロゾル全体の光学的厚さに占めるダストの光学的厚さの割合は、現在や完新世では数%に過ぎないが、氷期末期には15%程度と高い値を示すことが明らかになった。また、ダストの放射強制力は、現在に比べ10倍もの高濃度であった氷期の末期でも、大気上端で0.3Wm^<-2>程度の加熱、地表面で0.1Wm^<-2>以下の冷却効果があることが明らかになった。これは、現在のダストによる放射強制力の見積もりとほぼ同じオーダーで、氷期の南半球高緯度における高濃度ダストが気候へ及ぼす直接効果は小さかったことを示している。一方、北半球における大気中のダスト負荷のバックグラウンド変動を、過去数十年から数百年スケールで明らかにするため、ロシアのアルタイ山脈の氷河コアとともに、新たに掘削したカナダのローガン山のコアの解析を進めた。また、グリーンランド南部Site-Jコアの固体微粒子解析結果をまとめ、過去210年間の高濃度ピークの多くが、グリーンランド中央部のコアと調和的に見られることを見出し、広域ダストストームの可能性を示した。カナダのローガン山のコアとの対比により、こうしたダストストームが北半球スケールの現象であったかどうかについては、今後の検証となる。
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