研究概要 |
1999年台湾集集地震の震源断層であるChelungpu断層の南部と北部で,これを貫くバイロットボーリング掘削が行われた.我々は2度にわたって台湾を訪れ,コアの観察と試料採取を行った.その解析結果を2001年9月に台北と台湾中央大学で行われたICDPワークショップで発表した.このproceedingsは2002年に刊行される予定である.以下に我々の解析結果の要点を述べる. a)南部のコアに確認されたChelungpu断層には,厚さ1mほどの粉砕されたシュードタキライト層が伴われている.少数のシュードタキライト破片は溶解度が大変高い(最高温度は約1700℃)が,大部分は溶解度が極めて低い.シュードタキライト破片にはリサイクルされた古いシュードタキライトの破片がほぼ普遍的に含まれ,同一の断層で溶解層の形成を伴う地震性すべりが繰返し起ったことを示す. b)北部のコアにはシュードタキライトは全く認められず,代わりに厚さ2-3cm断層粘土層が数枚発達している.これらの層には厚さ数10cmから数mのモザイク状断層角レキ層が普遍的に伴われる.基質は軟弱な粘土で,しばしば高含水粘土の注入脈に貫かれている. c)南部の低溶解シュードタキライトには高速摩擦すべりを抑制する効果がある.北部の注入粘土脈は地震時に高間隙圧になったことを示し,elastohydrodynamic lubricationによってす不安定すべりが起こったことを示唆する.これら南北双方の対照的な断層岩の性状は,集集地震におけ南北での対照的な地震性すべり挙動をよく説明する. 2.四万十帯のシュードタキライトを分析し,摩擦発熱によって約1700℃に達していることをつきとめた. Stick-slip実験時に厚さ1ミクロン以下の溶解層が普通に形成されることは,既に明らかにしたが,その動摩擦係数に及ぼす効果をモニターするために,既設油圧三軸圧縮試験機の外部荷重と変位センサーのサンプリング周波数を1kHzと2kHzのものに交換し,それらのアンプを設置した.さらに歪ゲージを用いて,圧力容器内の試料近傍での変位と軸荷重を5kHzでサンプリングできるように計測システムを整備した.現在,溶解層の形成時刻を電気伝導度の変化として1msecで特定できるようにするためのシステム作りを行っている.
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