本科学硫究費補助金によって、主に瀬戸内火山岩や北海道の第三紀火山岩の研究が行われた。その研究結果の概要を以下に示す。 1.中期中新世の瀬戸内火山岩類は、主にHMAとカルクアルカリ質の安山岩からなるが、後者は非平衡な斑晶鉱物組合せをもっている。またこれらは、複合溶岩やマグマ性のenclaveを含む溶岩として産する。記載岩石学的研究と鉱物の化学組成の研究から、カルクアルカリ質の安山岩の主な形成過程はマグマ混合にあることが明らかにされた.マグマ混合に関与したマフィックマグマはHMA質マグマでフェルシックマグマはデイサイト質マグマである。複合溶岩の形成には少なくても3回のマグマ混合が関与したことも明らかになった。 2.北海道オホーツク海側の興部地域の中新世火山岩からHMAとアダカイト質安山岩が密接な関係で産することが明らかになった。これらの記載岩石学、斑晶鉱物の化学組成、全岩の化学組成から両者融立したマグマから形成された可能性があることが示された。 3.北部北海道に産する12Ma以降の玄武岩中の斑晶カンラン石とこれらに包有されるクロムスピネルの化学組成が検討され、玄武岩は2種類のマントルカンラン岩から形成されたことが明らかになった。 4.北部北海道に産する12Ma以降の玄武岩のSr及びNd同位体組成は大きくMORBよりもややenrichしたものと、かなりenrichしたものに2分される。前者は千島海盆の形成時に上昇したアセノスフェア性マントルに、後者はリソスフェア性マントルに由来することが論じられた。
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