研究概要 |
本科学研究費によって北部北海道の興部地域に産する中期中新世の火山岩の成因関係、及び、北部北海道に広く分布する中新世〜第四紀の玄武岩(北部北海道玄武岩類)のSr-Nd同位体比の系統的測定が行われ、これらの起源マントルの性質についての検討が行われた。これらの概要を以下に示す。 1.北部北海道、興部地域の中新世火山岩類は、豊野層、三井山溶岩・岩脈タイプI、岩脈タイプIIの3グループに分けられる。豊野層の火山岩は高いSr/Y比をもち、アダカイト質の安山岩〜デイサイトに相当する。三井山溶岩・岩脈タイプIは高Mg安山岩に相当する。アダカイト質の安山岩〜デイサイトは高いMgO・Cr量で特徴づけられることから、沈み込む海洋地殻の部分溶融によって生じたフェルシックマグマが地表へ上昇する過程でマントルと反応して組成をやや苦鉄質に変化させたものに由来していると考えられる。また高Mg安山岩は初生高Mg安山岩質マグマとよりフェルシックなマグマとの混合によって形成された可能性がある。 2.北部北海道の12Maよりも若い中期中新世〜第四紀の玄武岩の大部分はMORBと比較してややデプリートしたSr及びNd同位体比初生値(^<87>Sr/^<86>Sr=0.70296-0.70393, ^<143>Nd/^<144>Nd=0.51288-0.51307)をもち、これらの値には時代的変化はみられない。例外的に雄武地域の玄武岩は、これらの値よりもややエンリッチしたSrI、NdIをもつ。雄武玄武岩以外の多くの玄武岩の生成は、北部北海道下のリソスフェアへ貫入したアセノスフェアの活動で示されるマントル進化に深く関連していると考えられる。一方、雄武玄武岩はアセノスフェアの貫入で薄化した大陸性リソスフェアに由来するマグマからもたらされたと考えられる。アセノスフェア性マントル物質は、MORBの起源マントル物質に比較すると、Sr, Nd同位体比だけでなく、TiO2/K2O, Zr/Y比に関しても異なっていたと推定される。
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