研究概要 |
平成12年度は,第四紀滝谷花崗閃緑岩体と鮮新世黒部川花崗岩バソリスについて,深部からルーフの火山岩に至る間の系統サンプリングを行った.滝谷プルトンについてはプルトン側60地点,ルーフ火山岩側20地点で定方位試料を採取した.黒部川バソリスでは,プルトン側20地点,ルーフ火山岩側10地点で採取した. パイロット試料について行った消磁実験と磁化方位測定の結果によれば,プルトン側については今のところ安定な古地磁気データは得られていないが,ルーフ火山岩についてはともに安定した磁化データが得られた.滝谷岩体のルーフ(穂高安山岩)では逆帯磁であり,広域テフラとの対比から推定された噴出年代1.76Ma(原山,1999:長橋ほか,2000)との関係から,オルドバイサブクロン直後の松山クロンであることを指示している.一方,黒部川花崗岩体のルーフである爺ヶ岳火山岩類(原山ほか,2000)について,安定な磁化方位が得られており,東偏逆帯磁の結果が得られた.複数層準の火山岩層について同様な結果を得たため,永年変化や局所的な滑動の可能性は低く,東側への60゜に及ぶ傾動の結果である可能性が示唆された.爺ヶ岳火山岩類の傾動運動は北アルプスの隆起運動の反映であると推定され,信頼度を確認するため今後測定データを増やす予定である.プルトン内での極性変化地点についても安定した成分を捕捉するべくデータ数を増やす必要がある. 滝谷岩体の測年用の試料については,深度レベルを考慮して20地点を抽出し,K-Ar,FT年代測定用に鉱物の分離調整作業を進めつつある.年代測定は次年度以降となる予定である.
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