研究概要 |
平成14年度は,先の2年間の研究でプルトン内での磁化極性変換点が求められなかったため,岩体の垂直方向に系統採取した試料について鉱物分離調整を継続して行い,K-Ar, FT年代測定を行うとともに,プルトンの形成機構・条件について解析を行って,定置冷却モデルを検討した. 滝谷プルトンに関しては,岩体の最上部(ルーフ)でK-Ar年代法により約1.4Maの黒雲母とホルンブレンドの一致年代が得られたが,岩体の深部ではホルンブレンドK-Ar年代は分散しルーフ火山岩の噴出年代よりも古い異常値を示す.一方,黒雲母K-Ar年代は深部に向かって系統的に若くなる明瞭な傾向を示す.これらのことから,黒雲母K-Ar年代は,深部に向かって進行した冷却過程を示していると解釈された.他方,滝谷プルトン内部にマイロナイト構造を示す部分が広く確認され,300℃以上での変形を示す石英の流動変形が確認された.マイロナイト化はプルトンの冷却時に生じており,黒雲母年代の系統的な若化傾向はマイロナイトを形成した東傾斜の逆断層の変位と密接な関係があると推定された.以上の結果の一部は学会誌論文として発表済みであるが,マイロナイトの詳細な記載や形成年代論については本年度開催される国際集会(第5回ハットンシンポジウム)での発表を準備中である. プルトンの形成機構・形成条件については,まず基本的な岩相区分と岩相間の貫入・被貫入関係を検討し,後にプルトン最上部での固結条件の解析を行った.岩相間の関係には一部貫入関係が確認され,少なくとも現位置での単純な結晶分化では累帯構造は説明できないこと,岩相境界には広範囲にわたってマイロナイト化が進行していることが判明した.こうしたことから,プルトンの定置は複数回の貫入とテクトニックな変形及び変位が重要な役割を果たしていることが判明した.これらの結果の一部は既に学会誌に投稿し,印刷中である. プルトン最上部での固結条件は,ホルンブレンド-斜長石,斜長石-カリ長石,鉄チタン酸化物などの鉱物共生関係をもとに求められた.プルトンの定置条件は,基本的にマグマが厚さ3000m前後のコールドロン埋積火山岩層に底付けしたことを支持しており,最終的には600℃前後,0.1Mpa以下の条件でペグマタイトを形成して固結を完了している.これらの結果についても学会誌に投稿を予定している.
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