研究概要 |
本研究は,第四紀滝谷花崗閃緑岩および鮮新世末黒部川花崗岩を対象に,古地磁気と精密年代測定を用いた冷却史解析(研究1)と形成機構・条件の解析(研究2)を行い,プルトンの定置様式を解析することを目的とした. 研究1:プルトン側では安定な古地磁気データは得られていないが,ルーフ火山岩では安定した磁化データを得た.滝谷岩体のルーフ(穂高安山岩)は逆帯磁であり,オルドバイサブクロン直後の松山クロン(1.75Ma)に属す.一方,黒部川花崗岩体のルーフ(爺ヶ岳火山岩類)は東偏逆帯磁を示し,東方傾動(60-70゜)の結果である.傾動運動は黒部川花崗岩にも及び,岩体西縁部にはその過程で形成された顕著なマイロナイト帯が確認された. 一方冷却史解析については,プルトン内では磁化極性変換点が求められないため,岩体の垂直方向に系統採取した試料について年代測定を行った.滝谷プルトンでは,岩体の最上部(ルーフ)で約1.4Maの黒雲母と角閃石の一致年代(K-Ar法)を得たが,岩体深部では角閃石K-Ar年代値が分散し古い異常値を示す.一方,黒雲母K-Ar年代は深部に向かって系統的に若くなる傾向を示し,深部へ進行した冷却過程を表していると推定される.他方,滝谷プルトン内部にマイロナイト化が広く確認され,黒雲母年代の系統的な若化頃向はマイロナイトを形成した逆断層の変位による傾動に関係していると推定される. 研究2:岩相区分と岩相間の貫入・被貫入関係を検討し,プルトン最上部での固結条件を求めた.プルトン最上部での固結条件は,ホルンブレンド-斜長石,斜長石-カリ長石,鉄チタン酸化物などの鉱物共生関係を基に求められた.プルトンの定置条件は,基本的に厚さ3000m前後のコールドロン埋積火山岩層にマグマが底付けしたことを支持しており,最終的には600℃前後,0.1Mpa以下の条件でペグマタイトを形成して固結を完了している.岩相間には一部貫入関係が確認され,また広範囲にわたるマイロナイト化を確認した. 以上の結果から,プルトンの定置には複数回の貫入と傾動隆起テクトニクスが重要な役割を果たしていることが判明した.
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