研究概要 |
本年度は、平林トレンチ調査で採取した野島断層試料のFT年代測定を行った。この断層試料は、断層摩擦熱によって溶融したシュードタキライトを含む。シュードタキライトについては、Otsuki et al.[2000]が、その到達温度を鉱物の溶融等から720-1200℃と推定している。FTは950℃で1秒間の加熱により消滅、つまり年代値がリセットされることがTagami et al.[1998]のモデル式の外挿によって予測されるため、シュードタキライトの生成年代を求めることが可能である。測定には、シュードタキライト層(幅2mm)とそれに接する細粒ガウジ層(幅1cm)の2試料を用いた。今回試料から分離できたジルコンは数が少なかったため、FT長測定をすることができなかった。FT年代測定の結果、シュードタキライト層の年代値は55.3±6.0(1σ)Maを示した。一方、細粒ガウジ層の年代値は96.8±5.1(1σ)Maを示した。これらの断層岩の原岩は同じ領家帯の花崗岩(初期冷却年代は、淡路島に分布する領家帯花崗岩の黒雲母及び角閃石のK-Ar年代[高橋,1992]と東部領家帯花崗岩のFT年代[Tagami et al.,1988]から〜65-90Maと推定)であることから、幅2mmのシュードタキライト層においてのみ年代が若返ったと解釈される。しかし、FT長の測定結果が出ていないため、現時点ではシュードタキライト層の年代値が何を示すかは断定できない。今後はFT長測定を行い、シュードタキライト層の生成年代を決定する予定である。
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