シークウェンス層序研究においては地層から海水準変動の痕跡を検出することが必須作業であるため、深海に発達する海底扇状地はこれまでシークウェンス層序学の研究対象になりにくかった。本研究はこの問題に海岸線自動後退理論(Theory of Shoreline Autoretreat)を基礎とする実験シークウェンス層序学的手法で取り組むものである。平成12年度は本研究の初年度にあたり、実験水槽のセットアップとその性能の試験を実施した。本年度設置した水槽(マルジ3号)は、ステンレス鋼および透明合わせガラスでできており、そのサイズ(内寸)は長さ4.5m×幅1.25m×深さ1.35mである。また、観察窓となるガラス側面は長さ4.0m×深さ1.20mで、この観察窓には支柱など視野を遮るものは一切ない。またこの水槽に、既設の電磁流量計(平成10年度科学研究費補助金にて設置)を接続したことによって、水槽内の水位調節をコンピュータで制御できるようになった。既設の水槽(マルジ2号)も同時に使用可能である。 試運転の際に水槽のガラス-鉄枠接合部からの水漏れが検出され、その補修および再補修に手間取ったため(現時点では水漏れなし)、いまも性能試験を続けているところである。しかし、これと並行して理論面での検討を別途進めた結果、海底扇状地の発達時期と陸棚縁辺デルタ堆積系との関係について新知見が得られ、その成果の一部を2編の論文にまとめ国際学術雑誌へ投稿した(いずれも現在査読中)。また方法論を議論した別の1編はまもなく投稿できる状況にある。さらに、他の成果を米国石油地質学会2001年年会(2001年6月、デンバー)で発表する準備を進めている。なお、本研究の海外共同研究者であるProf.R.J.Steel(米国ワイオミング大学エネルギー研究所)を平成12年9〜10月に訪問し、平成13年度以降の本番実験についてその手法や細かな目標について打ち合わせた。
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