研究概要 |
本研究では,鉱物の微粒子表面に存在する有機物が粒子の成長過程に与える影響を実験的に評価し,それをもとに原始太陽系での有機物粒子の成長過程を議論することが目的である.本年度は,昨年に引き続きモデル始源有機物の衝突付着実験を行い、その結果をもとに小惑星の起源を議論した。 小惑星の特徴は次のようにまとめられる:(a)現在,小惑星領域に存在する固体物質は非常に少ない(林モデルの面密度より3-4桁少ない).これは,もともと材料物質がなかったからなのだろうか,それとも材料物質がなくなったからなのだろうか.(b)通常の惑星に比べて小さな天体が多数ある.これは,大きくなれなかったからなのだろうか,それとも大きな天体が壊れたからなのだろうか. (a)の「固体物質が非常に少ない」のは,次の理由による.有機物の付着効果によって小惑星は,星雲が乱流状態にあるにもかかわらず,急速に成長した(寡占成長).小惑星に取り込まれなかった1mサイズの粒子集合体(質量では大部分を占める)は,ガス抵抗によって急速に内側に落下した(落下のタイムスケールは102-3年).それで,2-3.5AUでは小惑星の材料物質が急速に減ってしまった.したがって,小惑星領域に固体物質が非常に少ないのは「なくなった=内側に落下した」ためである. (b)の「小さいものが多数」あるのは「大きな天体が壊れた」のではなく,上の理由(材料物質がなくなった)で「大きくなれずに成長が止まった」ためである.小惑星で破壊が重要になってくるのは,木星形成後で,しかも星雲ガス散逸後の高速衝突が起こりうる段階であるが,この時には,すでに小惑星領域の基本的な姿はできあがっていた.
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