研究概要 |
1.炭酸塩構造置換態硫黄の同位体研究:現世海棲生物の炭酸塩殻中に存在する硫黄の同位体分布を詳細に検討した.その結果,構造置換態硫黄はアラゴナイトよりカルサイト中に顕著に濃縮するが,その同位体比は海水溶存硫酸の値とほぼ一致しているとの確証が得られた.この成果は炭酸塩が過去の海水硫黄同位体進化を復元する上でエバポライト硫酸塩にとって代わる重要な指標となることを裏付けている. 2.大量絶滅期の硫黄同位体地球化学的研究:中国等の古生界を対象とする共同研究に参加し,硫黄同位体地球化学的解析を分担した.その結果,模式P/T境界において海洋硫酸態硫黄の同位体比が10%以上の突然かつ極端な負シフトを示す事実を見い出した.これは大規模隕石の衝突によるマントル硫黄の莫大量の放出を示唆しており,同期大量絶滅の成因論に新たな制約となるものである. 3.黒鉱鉱床生成期の硫黄同位体地球化学的研究:東北日本グリンタフ地域の黒鉱層準泥質岩層を対象とする広域的な硫黄同位体地球化学的研究に着手した.今年度は北鹿地域の試錐岩芯試料の分析を行い,いわゆるM2泥岩層準の硫黄同位体分布を検討した.その結果,硫化物硫黄の同位体分布が局部堆積盆の酸化還元環境を反映しており,黒鉱探査の有効な指標となることが示された.
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