研究概要 |
本年度は3つのアプローチで,予察的実験を中心に研究を行った.第一に,斑晶中のガラス包有物の分析方法を確立するために,玄武岩質溶岩として三宅島2000年海底噴火噴出物を対象とし,斑晶鉱物の分離を行った.これら分離斑晶を両面研磨して,ガラス包有物をEPMAによる主成分元素,微量成分の分析をおこなった.この際,特に揮発性成分である硫黄・塩素の分析方法を確立するためにさまざまな条件で分析を試み,例えばSの場合でSO2濃度0.1wt%時に相対誤差5%精度で分析する方法を確立した.さらに,ガラス中の硫黄のピークシフト量からS^<6+>/S^<2->比を求め,それに基づいて酸素分圧を求める手法を試みた.その結果,三宅島海底噴火噴出物の場合,NNO+0.4logユニット程度であることが分かった.これは,今後内熱式高圧装置を用いての実験で酸素分圧を制御する際の条件を確定するために必要な作業である.第二に,顕微鏡用加熱装置および金属顕微鏡を購入して,斑晶中のガラス包有物を段階加熱により再溶融させるシステムを作成した.伊豆大島火山の斑晶斜長石のうち,比較的冷却速度が遅かったためにガラス包有物の一部が脱玻璃化している試料を選び,本システムの運転を行い,さまざまな条件でガラス包有物を再溶融させる試行実験を行った.これは,結晶化したガラス包有物を再溶融させるに最適な昇温率を確定するための作業である.第三番目のアプローチとして,内熱式ガス圧装置を用いて,水に飽和した玄武岩試料に関しての高圧溶融実験を行い,酸素雰囲気の制御方法,試料容器の選定などを検討した.これら一連の作業により,来年度に計画している含水玄武岩試料の溶融実験への準備が整った.
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