研究概要 |
下部-中部地殻を構成している岩石のP波・S波速度を高温・高圧下で測定するために、ピストンシリンダー型高温高圧発生装置を用いた弾性波測定装置を開発した。岩石の地震波速度を島弧下部地殻相当の1ギガパスカル1000℃超の高温高圧条件下で直接測定可能となったことにより,これまでの400℃以下の温度条件での測定実験結果の外挿からでは予想されなかった高温部での急激な速度減衰を確認することができた.例えば一の目潟捕獲岩についての測定結果は次のようになった.角閃石はんれい岩では,0.6GPa,25℃→600℃において速度低下がみられ,P波速度は6.80〜6.58km/sであった.25℃と600℃時における速度差は約0.23km/sとなった.同様に,輝石角閃石はんれい岩では7.00-6.86〜6.77-6.66km/s,角閃石岩では6.89〜6.46km/s,角閃岩では6.81〜6.40km/sの範囲で温度上昇とともにP波速度が低下した.また,角閃岩については0.7GPa・650℃,0.8GPa・700℃,0.9GPa・750℃におけるP波速度も測定した.P波速度はそれぞれ,6.51km/s,6.49km/s,6.52km/sとなった. さらに、一の目潟捕獲岩に加え、丹沢深成岩類,コヒスタン下部地殻岩,南極産グラニュライトなどの弾性波速度を測定した.これらの岩石の弾性波速度を大陸や島弧地域で観測された地震波速度断面と対比した結果,以下のような岩石学的地殻断面についての新しい知見を得た。 (1)東北北本州弧の下部地殻は約15kmの角閃石を含むハイドラスな超塩基性-塩基性岩で構成されていることが明らかになった. (2)伊豆小笠原弧の中部地殻はトーナル岩から構成される. (3)南極大陸みずほ高原の下部地殻は,輝石グラニュライトからなる.
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