鉱物の成長組成累帯構造の成因

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12440148
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 北村 雅夫 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70004489)
• 研究分担者: WALLIS Simon 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30263065) ; 下林 典正 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70235688) ; 平島 崇男 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90181156) ; 三宅 亮 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10324609)
• キーワード: 鉱物 / 結晶成長 / 累帯構造 / 組織解析

研究概要

成長時に形成される化学組成の不均一による鉱物の内部組織は、鉱物や岩石の履歴ひいては惑星の進化を明らかにする上で不可欠な情報を提供する。本研究の目的は、組成累帯構造の観察と成長時の組成不均一性の形成に関する理論の構築を行い、組成累帯構造の成因を解明しようとするものである。具体的には、(1)構築する理論と対比するという立場で、主要な造岩鉱物について累帯構造の観察を行う、(2)統計力学的立場からの予言性のある成長理論の構築を目指す。
本年度は、以下のような研究を行った。
(1)成長組成累帯構造の観察に不可欠な走査型電子顕微鏡を、主要設備費を用いて購入し、装置のセットアップをし、研究に必要な精度での定量分析や組織観察が可能となった。さらに、天然の火成岩や変成岩中の数種の造岩鉱物を採集し光学顕微鏡下での観察を行い、研究に適した試料の選定した。それらの試料について、走査型電子顕微鏡下で、反射電子線像の観察や組成分析を行った。また、X線分析顕微鏡、透過型電子顕微鏡などで、累帯構造を詳細に記載した。
(2)理論的研究としては、現在までに構築してきた晶相変化の理論をさらに進展させ、理想固溶体結晶の成長の最も基本となるキンクでのカイネティックスについての式を導いた。この結果、成長組成累帯構造の素過程が明らかになった。また、統計力学的理論を現実の造岩鉱物に適用する場合に必要となる造岩鉱物中での原子の挙動を明らかにするために、分子動力学法によって長石などの相関係について検討した。

研究成果

• [文献書誌] Matsumoto,N.and M.Kitamura: "Effective distribution coefficients of a binary ideal solid solution controlled by Kink kinetics"Journal of Crystal Growth. 222. 667-676 (2001)
• [文献書誌] Balykov,L.N.,M.Kitamura,L.L.Maksimov and K.Nishioka: "Mean-field theory of kinetic smoothening of growth steps"Europhysics Letters. 52(6). 692-697 (2000)
• [文献書誌] Kitamura,M.and K.Nishioka: "Rapid-incorporation path of growth units on surfaces during crystal growth"Proceedings of the Japan Academy. 76,Ser.B.No.8. 108-111 (2000)
• [文献書誌] Miyake,A.,K.Kawamura and M.Kitamura: "Molecular dynamics simulation of Al/Si-ordered plagioclase feldspar"American Mineralogist. 85. 1159-1163 (2000)
• [文献書誌] Miyake,A.and N.Shimobayashi: "Cooling history of a tholeiitic basalt from Funagata Volcano deduced from microstructure of minerals"Journal of Mineralogical and Petrological Sciences. 95. 1-8 (2000)
• [文献書誌] Hirajima,T.,D.Nakamura and K.Shirahata: "Winchite from Mt. Hiei contact aureole, Kyoto, Japan"Journal of Mineralogical and Petrological Sciences. 95. 107-112 (2000)