研究概要 |
1.コンドリュール・リムの成因:コンドライト中のコンドリュール・リムは,コンドリュールが原始星雲中に存在したとき,塵がその表面に付着してできたものだと考えられており,リムの存在そのものが,コンドライトが原始星雲物質の集積物である強い証拠だとされている。このモデルを検証する目的で,代表者らは多くのコンドライト隕石のリムの研究を行っている。これまで,ヴィガラノCV隕石中から層状ケイ酸塩に富むリムを発見し,リムとそれが囲むコンドリュールの間に水質変成作用の痕跡を見い出した。さらに他の2つのCV隕石を調べ,いずれの隕石からも層状ケイ酸塩に富むリムを発見し,リムがコンドリュールを大規模に交代変成してできている証拠を見い出した。これらの結果は,一様に,リムは塵の集積物ではなく,隕石母天体において水質変成作用を受け,その後さらに衝撃による角礫岩化作用によってできたものだ,という我々の母天体成因モデルを支持している。 2.コンドライトの高温における衝撃実験:コンドライトは,その母天体中で様々な程度の熱変成,衝撃変成作用を受けている。これまで,これらの変成作用は別々に取り扱れてきた。しかし,加熱された隕石母天体の衝突現象は,きわめて一般的に起こったと考えられる。代表者らは,隕石が加熱された状態で衝撃圧力を受けた場合どうなるかを調べる実験を開始した。これまで,アエンデCV3隕石を300-800℃に加熱して10-20GPaの衝撃圧力を与える実験を行った。その結果,この圧力範囲では,室温の場合,加熱による変化はほとんど見られなかったが,600℃ではマトリックス中に溶融物と思われる微小粒子が多数できはじめ,700-800℃では細かい溶融脈が網の目状に形成されることがわかった。その溶融脈組織は,ケイ酸塩の暗色化を示すCK隕石や一部の普通コンドライト隕石のものと良く似ている。
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