研究概要 |
コンドライト隕石のケイ酸塩暗色化:その鉱物学的原因と成因 ケイ酸塩の暗色化とは,陽石の薄片を透過光で見たとき,特にマトリックスのケイ酸塩(主にカンラン石)が黒茶色に見える現象である。これはコンドライト隕石に一般的に見られる現象だが,その原因は長い間不明であった。 我々はケイ酸塩暗色化の原因を明らかにする目的で,分析SEMおよびField Emission SEMを用い,Kobe CK4隕石およびYamato693 CK5隕石の微細組織の詳細な研究を行った。その結果,これらの隕石のマトリックスは,無数の微小気泡およびマグネタイトやペントランダイトの微小包有物を含むカンラン石(vesicular olivine)を高い割合いで含んいることが明らかになった。それゆえ,CK隕石のケイ酸塩の暗色化はvesicular olivineの存在によるものだということが結論される。 Vesicular olivineは,その産状と内部組織が炭素質コンドライトの衝撃溶融脈のものとよく似ていることから,衝撃によって生成したカンラン石の局所溶融物が結晶化してできたものだと考えられる。最近,我々は,Allende隕石を800℃に加熱して24GPaの衝撃圧力を与える実験を行ったところ,マトリックス全体に,CK隕石のvesicular olivineとよく似た微細な網の目状の溶融脈が形成されることを明らかにした。以上のことから,我々は,CK陽石のケイ酸塩暗色化は,高温(>600℃)に熱せられた天体が,比較的低い衝撃圧力(<20GPa)による衝突を受けることによってできた,という新しいモデルを提出した。ケイ酸塩暗色化は,今後「高温に加熱された始原天体における衝撃変成作用」の指標になると我々は考えている。
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