研究概要 |
太陽系空間には大きさ20-400ミクロンの塵が普遍的に存在しており,地球には年間およそ30,000トンの塵が降り注いでいる。流星は,そのような塵が地球大気に突入するときにできる現象である。塵の大部分は,隕石(大きさ数-数10センチメートル)と同様に,小惑星帯からやってくると考えられているが,小惑星から塵がどのようにしてできるかはよくわかっていない。今回,我々は,隕石の衝撃回収実験によって,塵ができる新たなメカニズムを発見した。 地球表面で回収される塵のほとんどは含水(水を含む)で多孔質の隕石に似ている。しかし,含水で多孔質の隕石は,落下隕石中わずか2.8%を占めるにすぎない。このような存在度の大きな違いは,地球大気の「フィルター」効果によると考えられてきた。すなわち,多孔質の隕石はもろいため,大気との衝突によって小さな粒子に分裂してしまい,大部分は流星となってなくなってしまう,と考えられてきた。しかし,このような「フィルター」効果が本当に原因かはわかっていない。 我々は,2つの多孔質な隕石の衝撃回収実験を行った。両隕石のうち一方は含水であり,他方は無水である。衝撃実験の結果,含水隕石は,無水隕石よりもはるかに広い範囲の圧力で,衝撃を受けた部分が微細な粒子に粉砕され,さらに圧力の解放時に爆発的な膨張を起すことがわかった。これは,衝撃時の激しい加熱によって,含水隕石からぬけ出た水蒸気の膨張が原因と思われる。我々の結果は,含水小惑星が無水小惑星よりも,衝突によって塵を形成する割合がはるかに高いことを示しており,塵と隕石における含水物質の存在度の大きな違いをうまく説明する。すなわち,塵と隕石における含水物質の存在度は,それらが地球大気に突入する以前にすでに確立されていることを示している。
|