研究課題/領域番号 |
12440151
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中塚 武 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (60242880)
|
研究分担者 |
若土 正暁 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60002101)
坂本 竜彦 北海道大学, 理学研究科, 助手 (90271709)
|
キーワード | 海氷 / 古海洋 / オホーツク海 / IRD / 温暖化 |
研究概要 |
本研究では、アルベドの増大や大気海洋間の熱交換の阻害、海洋の熱塩循環の駆動などを介して、地球の気候システムに大きな影響を及ぼす海氷が、オホーツク海というその最も低緯度の分布域において、過去から現在へどのように変動したかを解明することを目的としている。そのために、新たに海氷Proxyを開発して、オホーツク海の堆積物コアに応用した。開発を目指したProxyは、Ice Algae(主に珪藻)由来の高分岐イソプレノイド(HBI)等の脂質バイオマーカー、および海氷運搬砕屑粒子(IRD)の2つである。残念ながらオホーツク海堆積物には、HBIは検出されず、HBIによる海氷変動の復元は出来なかったが、セジメントトラップによって採取された沈降粒子試料と衛星観測によって詳細に明らかとなった海氷の形成・融解のタイミングの相互解析から、オホーツク海では海氷の融解時期にのみ、IRDが沈降・堆積することが証明され、IRDによって過去の海氷の生成量、分布範囲などの解析が可能であることが示された。IRD及びその他多くの海洋環境復元のためのProxiesを、オホーツク海の堆積物コアに応用した結果、IRDのデータからは、1)オホーツク海では氷期に、グローバルな寒冷化イベント(ハインリッヒイベントやダンスガード・オシュガーサイクル)に対応した海氷形成の拡大が生じたこと、2)中期完新世(約6000年前頃)の温暖期には、現在よりもむしろ海氷は多かったことなどが明らかとなった。同時に測定された各種の微化石や化学トレーサーの分析から、中期完新世のオホーツク海は、現在のような珪藻主体の生態系ではなく、円石藻の繁茂する温暖かつ塩分成層の発達した環境下にあったことが明らかになっている。こうした事実は、完新世の環境下では、オホーツク海氷は、大局的には「寒冷化」よりも「低塩分化」に反応して拡大する可能性を示唆している。
|