研究概要 |
変成度の低い炭素質コンドライトであるKainsaz(CO3.3)、Y-81020(CO3.0)、Daral Gani521(DAG521)(CV3,還元的タイプ)中の包有物等について、イオンマイクロプローブによる酸素同位体分析、マグネシウム同位体分析、希土類元素分析をおこなった。希土類元素分析の手法は現在開発中であり、今回はじめて実際の試料に適用した。Kainsaz隕石ではコンドルール中にアメーバオリビン包有物が取り込まれており、コンドルールのオリビン斑晶とアメーバオリビンの酸素同位体組成がきわめて非平衡であることを発見した。Y-81020隕石では、50〜100μmの粒子の集合体からなるグロサイト(CaAl4O7)を含む包有物の分析をおこなった。酸素同位体組成は、各粒子の中心にあるグロサイトが0パーミルであるのに対し、それを取り囲むスピネル、ヒボナイト、メリライトはすべて酸素16に富む組成を示した。マグネシウム同位体分析の結果、グロサイト、ヒボナイトとも典型的なCAIのAl26/Al27初期値(5E-5)を持つことがわかり、後の時代の変成の影響はない。さらに希土類元素のパターンは、両者ともタイプ2と呼ばれる気相からの凝縮を示唆しており、起源が異なる(例えば蒸発残渣と凝縮物)とは考えにくい。残された可能性はCAI形成と同時期の酸素同位体のリセットであるが、検討のためにはグロサイト中の酸素拡散のデータが必要である。DAG521隕石では、タイプB1包有物中のメリライト、アノーサイトに、極端に酸素同位体組成が異なるグループが存在することを発見した。Al26/Al27初期値は典型的なCAIの値(5E-5)を示すことから、酸素同位体組成が部分的にリセットされたイベントはCAI形成直後であることがわかった。
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