研究概要 |
本研究は,堆積物中で固定されているヒ素が化学態を変化させる過程と,それに関わる生物活動を明らかにし,地下水中への溶出過程を説明するために計画された.本年が二年次であった. 人為汚染源から離れた西表島での分析はほぼ完了した.その結果から,堆積物中のヒ素は浅所で植物も関わる生物化学的反応により,堆積物中から溶出したヒ素が酸水酸化鉄に吸着されて堆積物中に固定され,その後黄鉄鉱に固定されること,これらの鉱物相の変化には鉄酸化バクテリアと硫酸還元バクテリアが関わっており,鉄酸化バクテリアは有機物態ヒ素を形成している可能性があることが明らかになった.これらの結果から,栄養塩類の添加や井戸の掘削に伴う地下水の酸化還元状態の急激な変動が人為的に起れば,ヒ素の溶出は促進されることが示唆された.この結果の一部は地球惑星科学関連合同大会で発表すると同時に,現在国際誌に投稿準備中である.さらに,大阪層群中のヒ素のついて高密度の試料採取を行い,総ヒ素の分析を完了した.また,浅層地下水中のヒ素濃度の季節変動についても,大阪府下の2ケ所で追跡しており,ともに生物活動との水質変動との関係を確認した.一方の結果は国内の学術雑誌に論文として投稿中であり,もう一方は大阪層群中の総ヒ素濃度の結果とともに2編の講演として来年度の国内学会で発表する予定である.また,大阪層群中のヒ素の分布は取りまとめて10月にバングラデシュで行われる国際学会でも発表準備を行っている. 有機態ヒ素の分離定量についての予備実験を行っている.モノメチルヒ素・ジメチルヒ素については定量の確信が得られたので,今後ルーチン分析に進む予定である.次年度は最終年度であるので,これまでに得られたデータをまとめて論文投稿を急ぐとともに,前半は精力的に分析を行う予定である.
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