3種のイオン液体、ブチルメチルイミダゾリウムヘキサフルオロリン酸([bmim]PE_6、)、ブチルメチルテトラフルオロホウ酸([bmim]BF_1、)、ブチルメチルイミダゾリウムピストリフルオロメチルスルホニルアミド([bmim](CF_3SO_2)_2N、)を合成した。これらは、カチオンとしてブチルメチルイミダゾリウム([bmim]^+)を共通に持ち、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6-)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4^-)、ビストリフルオロメチルスルホニルアミドイオン((CF_3SO_2)_2N^-)の三種類の異なるアニオンを持つ。これらのイオン液体について、赤外線吸収スペクトルとラマンスペクトル(偏光解消度を含む)の測定を行った。[bmim]PF_6と[bmim]BF_1の2種のイオン液体中で、[bmim]^+カチオンがブチル基のコンフォメーションを含めて同一の構造をとっているということがわかった。また、[bmim]PF_6、中のPF^<6->イオンは正八面体型に極めて近い構造をとっているが、そのサイトの対称はO_hから低下しており、カチオンとの相互作用は結晶中に比べて弱いと考えられる。従来考えられていたようなカチオン、アニオン間の強い相互作用(例えばカチオン-アニオンペアの形成)を示唆するような実験結果は得られなかった。次ぎに、[bmim]PF_6および[Bmim](CF_3SO_2)_2N中でのtrans-スチルベンの異性化反応速度をピコ秒時間分解蛍光分光によって調べた。その結果、イオン液体中での速度定数は、粘度が通常の有機溶媒に比べて極めて大きい([bmim]PF_6で312cP、[bmim]Tf_2Nで53cP)にもかかわらず、アルカン、アルコール中と同程度の値であることがわかった。ベタイン色素の吸収スペクトルから求めた[bmim]PF_6の極性指数E_1(30)は54kcal mol^<-1>であり、アルコールの値〜50kcal mol^<-1>と近い。しかし、実測された[bmim]PF_6中での異性化速度定数は、アルコール中の値を外挿して得られる速度定数とははるかにかけ離れた値となっており、イオン液体の溶媒としての特性を、従来の極性、粘度というパラメーターだけで適切に記述することが困難であることが明らかとなっ。さらにピコ秒時間分解蛍光分光によってジメチルアミノベンゾニトリル(dimethylaminobenzonitrile、 DMABN)の光誘起分子内電荷移動反応を・[bmim]PF_6と[bmim]Tf_2N中で調べた。通常の有機溶媒中とは顕著に異なる結果が得られ、イオン液体の溶媒としての新奇性がここでも確認された。
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