化学反応の量子ダイナミックス

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12440162
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 加藤 重樹 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20113425)
• キーワード: 化学反応 / ポテンシャル面 / 量子ダイナミックス / 光解離反応

研究概要

今年度は、(1)H_3分子の緩和過程の量子動力学、(2)H_2COのポテンシャル面と解離ダイナミックス、(3)NOClのポテンシャル面と振動エネルギー準位についての研究を行った。(1)では、H_3^+イオンの解離性電子付着反応の機構を知る上で重要な、H_3の高いRydberg状態の過程を調べるため、Rydberg電子に対する有効ポテンシャルを求め、それを用いてRydberg電子とH_3^+イオンの運動を記述する有効ハミルトニアンを構築した。その際、2sA_1'状態から2pE'状態への非断熱遷移の効果をハミルトニアンに組み入れた。このハミルトニアンを用いて、約2000のRydberg状態のエネルギー準位と寿命を求めた。その結果、sとpのRydberg状態の寿命は数psから1nsの間にあり、主量子数に係わらず不規則に分布すること、dとfのRydberg状態の寿命はsp状態より長いことなどが分かった。(2)では、電子基底状態における分子解離と異性化反応を記述することができるポテンシャル面を構築し、古典トラジェクトリー法により解離反応に対する異性化反応の役割を調べた。(3)では、基底、励起状態のポテンシャル面を求め、基底状態の全振動エネルギー準位を求めた。これらの研究の他、遷移金属原子と酸素分子の反応の典型例であるTi+O_2についてポテンシャル面とトラジェクトリー計算を行った。

研究成果

• [文献書誌] T.Nakajima: "Theoretical Study of the Effect of the Intermolecular Spin-Orbit Interaction in the Collision-Induced Intersystem Crossing of S1 State Glyoxal by Ar"Journal of Physical Chemistry A. 105. 10657-10663 (2001)
• [文献書誌] M.Tashiro: "Predissociation of H3 2s Rydberg State : Quantum Dynamics Study"Chemical Physics Letter. (印刷中). (2002)
• [文献書誌] H.Sakurai: "Theoretical Study of the Metal Oxidation Reaction Ti+O2 → TiO+O : Ab Initio Calculation of the Potential Energy Surface and Classical Trajectory Analysis"Journal of Physical Chemistry A. (印刷中). (2002)
• [文献書誌] K.Ohmiya: "RISM-SCF Study for the Rate Constant of SN2 Reaction CH_3Cl+Cl-in Aqueous Solution"Chemical Physics Letter. 348. 75-81 (2001)
• [文献書誌] A.Morita: "Charge Polarization with Large Amplitude Hygrogen of Pyrazinyl Radical : Implication for the Diffusion Dynamics"Chemical Physics Letter. 348. 155-159 (2001)
• [文献書誌] S.Iuchi: "Molecular Dynamics Simulation with the Charge Response Kernel : Vibrational Spectra of Liquid Water and N-Methylacetamide in Aqueous Solution"Journal of Physical Chemistry A. (印刷中). (2002)