| 研究概要 |
今年度は、(1)H_2COの解離反応についての量子ダイナミックス計算および(2)NOCl分子の振動励起状態についての理論計算を行った。(1)では、昨年度に作成した解離および異性化のチャンネルを記述することができるポテンシャル関数を用い、各反応チヤンネルのcumulative reaction probabilityを量子力学的に求めるプログラムの作成を行った。現在、自由度を制限したモデルについての計算が終了し、全自由度を考慮した量子ダイナミックス計算を実行する準備を進めている。(2)では、電子基底状態に対して解離極限近くまでの約1,400の振動固有状態を求めた。赤外、ラマン分光により得られている低い励起状態のエネルギー準位は良く再現されており、それらは大きな遷移モーメントを持つことが分かった。振動エネルギー準位に対して、最近接エネルギー間隔を調べると、解離極限近くまでregularな振動状態を持つことが分かった。この結果は、水素以外の重い原手から成る分子では、極めて特異的であると言うことができる。この高振動励起状態でのregularityの原因を調べるため、2次元モデルに対して古典トラジェクトリー法を用いて力学的特徴を調べたところ、解離極限近傍においても準周期的トラジェクトリーが存在することが明らかとなり、量子状態のregularityによく対応していることが分かった。更に、新しい研究課題として、No_3のポテンシャル面および新しい半古典トラジェクトリー法の開発を開始した。
|
