研究概要 |
長距離秩序を持たない粉末試料で分子の立体構造を決定することは長年の構造化学における懸案であり,固体NMR法はそのような試料で構造情報を取得しうる手法として注目されてきた.本研究では,これまでに,我々により提案された固体NMR法により分子構造を決定する手法を,これまで適当な分光学的手段が存在しなかったために構造が決まらず研究の進展が妨げられていた分野に適用し,構造と機能の関係を究明することを目的とする.本年度は,ハードウエアの整備と,分子認識を行っている系であるコール酸・γ-バレロラクトン包接化合物を取り上げて,その特定の箇所を^2Hや^<13>Cでラベルした包接化合物を合成した. (1)高速回転プローブの改造 多数のラベルした核スピンを含む試料で高分解能を達成するには少なくとも20kHz以上の速度でマジック角度回転(MAS)をする必要がある.そこで25kHzで高速回転可能なプローブを購入し,現有の9.4Tの超電導マグネットを基にしたNMR装置で^<15>N,^<13>C,^1H三重共鳴実験を行えるように改造した. (2)試料の合成 メチル基を^<13>C,^2Hで同位体置換したγ-バレロラクトンを合成した.重水素化は緩和時間を長くするために必要である.また,カルボニル基を^<13>Cで同位体置換したコール酸を購入し,γ-バレロラクトンとの包接体を合成した.
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