研究概要 |
1)六極電場非破壊選別とドプラー選別飛行時間測定を用いた新しい実験法により水素結合型クラスターDCl二量体のレーザー光解離ダイナミクスを解明した。その結果、遷移状態近傍にある直線型不安定化学種[ClDCl]の振動状態を直接観測することができた。振動構造解析の理論計算を行った結果、実験で得られた振動数は安定DCl分子と大きく異なり、v=0,1,2,3準位間のエネルギーはそれぞれ、1496,809,1488cm^<-1>であると帰属できた。 2)水分子の電気放電により高密度の超音速OH(^2P)ラジカルビームを生成し、1mm長の六極電場を用いてW量子状態を非破壊選別した。レーザー誘起蛍光法(LIF)でOHラジカルのW状態を分離した集束曲線を得ることに成功した。偏光レーザーでアライメントさせたNO分子と交差させてNO_2分子の検出を試みたが、LIF信号が微弱なため検出できなかった。検出法の改良が今後の課題である。 3)表面反応における分子配向効果を直接観測するため、1m長の六極電場を用いた超高真空対応型配向分子ビームラインを制作した。またそれを用いて、配向塩化メタン分子ビームを超高真空下で発生させることに成功した。配向CH_3Cl分子ビームは|JKM>=|111>に86%占有分布している期待通りの配向特性であった。 4)Ir(100)及びIr(111)単結晶表面における水素分子の解離吸着は、表面と非平衡状態にある表面近傍の原子状水素を経由する「ホット原子機構」に基づくことを反応速度解析によりはじめて実証した。
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