種々の温度における各ポテンシャル極小構造に対応する領域の特徴を明らかにするために、トラジェクトリー上における虚の振動子の数や最急降下経路における変曲点の分布を調べた。その結果、210K前後で、何れの量に関しても大きなギャップがみられ、高温では複雑であったポテンシャル面が低温では単純になっていて、これがfragile-strong転移に対応していると予想される。 さらに、モンテカルロ法とポテンシャル極小化を組み合わせて、高エネルギー状態から低エネルギー状態への経路と配置空間における距離を調べた。完全にランダムな位置と配向から出発して、-53。5kJ/mol程度までは容易にエネルギーが低下するが、以降のacceptの確率はきわめて低く10^<-4>程度となり、また10数分子が協同的に動く必要があることがわかった。最終的に得られた構造はMD計算による低エネルギー構造と類似であり、この状態に到るまでの経路を、128のポテンシャル極小構造とその間の遷移として記述することが可能となった。 水2層分の距離だけ隔てられた疎水性壁の中における、水の相挙動を計算機シミュレーションにより調べた。壁に平行な面密度を固定すると、2層からなる準二次元結晶が生成することを、我々は既に発見している。今回は、壁間の距離を固定し、壁に平行な方向の応力を固定した。その結果、このような状態の水は、一次の相転移を経て、別の無定形相に転移することが示された。また、この無定形相は、拡散係数はほぼ0であることから、ガラス状態と考えられ、一次相転移とガラス転移が同時に起きている極めて稀な例であることを発見した。
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