計画調書に記述した当初の計画は、既存の設備であるカラーセンターレーザーを光源として用いる超高分解能分光の装置を製作することであったが、このレーザーに重大な故障が生じたため計画調書の通りの研究を進めることは困難となった。そこで少し計画を変更して、同じ趣旨に沿う以下に記述するような高分解能分光の研究を推進した。 第一に、キャビティーリングダウン法とマイクロ波を組み合わせた二重共鳴分光の実験を目指して装置の製作を行った。平成12年度に、真空槽、パルス色素レーザー装置及び周辺の光学素子等の整備を行い、これらを用いて、ヨード分子を基準とする波長校正が出来るように調整を行った。平成13年度は、上記レーザー光源に、パルス放電ノズルを組み込んだレーザー励起蛍光観測セルを組み合わせてスペクトルを測定した。テストとして、OHラジカルのA^2Σ-X^2IIのυ=0-0バンドを観測した。分解能0.028cm^<-1>でQ_<11>(1)及びQ_<21>(1)スペクトル線をそれぞれ250及び300のS/N比で観測することができた。現在、C_2S_2ラジカルのスペクトルを観測すべく実験を進めている。今後、高反射率の鏡を組み込み、キャビティーリングダウン分光を試みる予定である。 第二に、高分解能分光法を用いて、いくつかの短寿命分子種のスペクトルの観測を行った。まず、ダイオードレーザーによる赤外高分解能分光によって、Co(CO)_3NOのエキシマーレーザー光解離で生成したCoCOラジカルのスペクトルを観測した。さらに同じラジカルのミリ波スペクトルを測定し、これらを併せて精密な解析を行った。また、ミリ波分光によっては、臭化ビニルのエキシマーレーザー光解離で生成したビニルラジカルのスペクトルを観測した。
|