研究概要 |
昨年度に立ち上げた位置感知型2次元検出器2枚を備えた反跳イオン運動量スペクトル直接測定装置を用いて、今年度は3原子分子の3体解離過程の研究をさらに進めるとともに、4原子分子の4体解離過程のコインシデンス測定に成功した。さらに光電子の飛行時間測定にも成功し、それを利用した電子-イオン-イオン3重コインシデンスの測定にも成果をあげた。 直線3原子分子については、昨年度探求したN_2OのO1s電子のπ^*,σ^*軌道への共鳴励起の研究を発展させ、2つのN原子(端のNtと中央のN_c)を区別してπ^*(3π)軌道へ共鳴励起し、励起状態における構造変化を調べることができた。N_tを励起したときの方がN_cを励起したときよりずっと大きく結合角を曲げることを見いだし、計算した励起状態のポテンシャル曲面を用いて説明した。さらに、昨年のCO_2の場合同様、π^*励起状態のRenner-Teller効果による縮重状態の分裂も分けて観測することができた。4原子分子では、平面分子であるBF_3について、4体解離で生成するB^+,F^+,F^+,F^+の4重コインシデンス測定に成功し、それらの運動量ベクトル相関から、共鳴励起状態ではピラミッド型に変形してからオージェー過程を起こして4価イオンになり、その後クーロン爆発によって4体解離することを明らかにした。電子-イオン-イオン3重コインシデンス実験においてはCO_2のClsおよびOls電子の形状共鳴領域における光電子の分子軸に対する角度分布を求めることができた。コインシデンスするCO^+とO^+の運動量ベクトルから分子軸を決め、それらとコインシデンスする光電子の運動量ベクトルをプロットすることにより、光電子放出の異方性をエネルギーの関数として求めた。
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