研究概要 |
分子の形の変化や原子の組み替えを含む化学反応を第一義的に規定するのはその電子状態の変化であるが、それが溶液内で起きる場合、溶媒は反応の平衡および速度の両方にしばしば決定的影響をおよぼす。本研究は溶液内化学過程を取り扱うために本研究代表者がこれまで開発して来た方法論をさらに発展させ、それらを統合することにより溶液内化学反応の分子論を構築しようとするものである。 化学反応は、一般には、単にバルクの溶液内で進行するわけではなく、電極-溶液、酵素-溶液など様々な界面を反応場として起きる。最近では気液、液液界面も重要な反応場として認織されつつある。したがって、本研究ではこれらの界面における溶液、さらには気液、液液相分離に関わる問題も対象とし、いくつかの新しい理論を発展させ、それらの研究を53編の学術論文として発表した。それらの研究成果は下記のカテゴリーに分類される。 (1)溶液内分子の電子状態、化学反応、溶媒和電子 (2)生体分子の安定性と蛋白質のフォールデイング (3)溶液のダイナミクス、緩和過程 (4)界面における液体の統計力学 (5)分子性液体の統計力学の理論的発展、相転移・相分離 また、これらの研究成果の大部分に解説を付して下記の単行本として出版した。 F.HIRATA Ed.,"Molecular Theory of Solvation,"Kluwer-Springer Academic,2003.
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