研究概要 |
光増感電子移動(PET)による,アリール置換テトラメチレンメタン(TMM)およびテトラメチレンエタン(TME)型中間体の発生と反応性の検討を目的とし,本年度は以下の2点について検討を行った. 1)逆電子移動(BET)反応によるビラジカル生成機構の速度論的証明: a)2,2-ジアリール-1-メチレンシクロプロパン(1) b)5,5-ジメチル-2,3-ビス(α-スチリル)-1,3-シクロペンタジエン(3) 基質1及び3のPET反応で生ずるTMM型カチオンラジカル(2^<・+>)及びTME型カチオンラジカル(4^<・+>)がさらにTMM型ビラジカル(2)及びTME型ビラジカル(4)に変換される事をレーザー光分解法で確認した.後者の中間体(2,4)は前者の中間体(2^<・+>,4^<・+>)のBET反応で生成するものと推定される.実際,それらの生成速度は計算で求められるBET反応速度と同程度である事が確かめられた. また,これら中間体構造は平面型の母体と異なり直交型である事が判明した. 2)トリメチレンメタンの構造: c)シズ及びトランス-2-アニシル-3-メチル-1-メチレンシクロプロパン(5,6),シズ及びトランス-2-アニシル-1-エチリデンシクロプロパン(7,8) これらのPET反応で生ずるTMM型カチオンラジカル(9^<・+>)及びビラジカル(9)について検討した.その結果,増感剤(S)の違いで1重項及び3重項のイオンペア[9^<・+>/S^・]が生成する事がわかった.また,これらはBETでそれぞれ1重項及び3重項のビラジカル9を与え,さらに前者はより熱力学的に安定な後者に内部転換するものと考察した.これらの諸過程はエネルギー論的考察からも支持された.現在,光音響熱測定法による検証を進めている.また,これら中間体の構造は,計算及び実験から,前系の直交型中間体ほどではないにしろ,同じく平面性を失っている事が示唆された.
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