研究概要 |
1.6-t-ブチル-6-フェニルペンタチアンの酸化 6-t-ブチル-6-フェニルペンタチアン(1)のトリフルオロ過酢酸による酸化を検討し,主として生成する一酸化物が6-t-ブチル-6-フェニルペンタチアン3-オキシド(2)であることを単結晶X線構造解析により決定した。出発のペンタチアン(1)が結晶状態でイス型配座をとるのに対し,3-オキシド(2)はツイスト型の配座であった。さらに,ペンタチアン(1)と3-オキシド(2)の温度可変1-H NMRを検討し,溶液中の配座も結晶中の配座と同じであることを明らかにした。この結果はGaussian98を用いた分子軌道計算でも支持された。 2.6-t-ブチル-6-フェニルペンタチアン3-オキシド(2)の熱分解反応 3-オキシド(2)の熱分解反応を2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン存在下に行った。その結果,t-ブチル基とフェニル基を有する化合物としては,t-ブチル(フェニル)チオケトンとその分解物が生成すること,活性硫黄種の捕捉生成物としては,4,5-ジメチル-3H,6H-1,2-ジチイン1-オキシド(3)(S_2O捕捉生成物),4,5-ジメチル-3H,6H-1,2-ジチイン(4),および6,7-ジメチル-5H,8H-1,2,3,4-テトラチオシン(5)(以上S_2捕捉生成物)が生成することを明らかにした。 3.単体硫黄の酸化 単体硫黄を低温下ジメチルジオキシランで酸化後,ジアゾアルカン類を加えて室温まで昇温すると,対応するジチイランオキシド類が得られることを明らかにした。この結果は,単体硫黄酸化物からS_2Oがジアゾアルカンに移動し,窒素の脱離を伴ってジチイランオキシドが生成したことを示している。この方法は,従来法に比べより一般的な置換基をもつジチイランオキシド合成法である。
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