研究概要 |
本研究ではアシルラジカル種のイミンC=N結合への環化が極性支配型であることを利用し、ラクタム環を中心とする新しい含窒素複素環合成法として確立することを目的としているが、平成13年度には以下に示す成果を新たに見出した。 末端にイミノ基を有するアセチレンに対するシリルカルボニル化反応をトリス(トリメチルシリル)シランをラジカルメディエーターとして検討した。その結果、α位にシリルメチレン基を有するラクタム環の一段構築に成功した。この反応は一般性を持ち4員環から8員環まで問題なく適用出来ることを確認した。 一方、末端にアミノ基を有するアセチレンに対しトリブチルスズを用いスタニルカルボニル化反応をラジカル反応条件下に検討し、極性支配型環化が進行するかを検討したところ、窒素上が無置換のラクタム環が得られることを見出した。この事実は鍵活性種であるα,β-不飽和型のアシルラジカルに対して分子内のアミノ基の求核攻撃が起こったものとして合理的に理解される。生成物は飽和型と不飽和型の混合物であったが、その生成経路に関して重水素化試薬を用い反応機構の合理的解釈に資する知見を得た。また、この環化が5、6、7員環のラクタムにおいて一般性を有することを確認したが、イミンの場合と異なり、4員環ラクタムの生成は認められなかった。 次に比較のため、末端に水酸基を有するアセチレンによるアシルラジカル種の求核的捕捉反応を調べた。スタニルカルボニル化の結果、期待した水酸基の関与を伴った反応が生起し、ラクトンが生成物として得られた。 以上の知見はアシルラジカル種のカルボニル部位が極性基として求核攻撃を受ける可能性を立証するものといえる。一方で、検討した各系はα,β-不飽和型のアシルラジカルを扱っていることから、通常のアシルラジカルの場合との牛較検討することが課題となった。以上、最終年度に向け、重要な複数の成果を得ることが出来た。
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