分子サイズが分子の性質に与える量子的な効果は、単分子と分子集合体との境界線付近に発現されることが期待されている。この分野の研究は、主に理論が先導して研究が進行してきたが、研究対象となるべき具体的な物質が存在しないため、物性に関する知見は限られていると言わざるを得ない。そこで、本研究では、有機合成化学の手法を駆使して、巨大な分子量を有する単一分子の設計・合成・物性評価を行い、分子サイズが分子の性質に与える効果を評価することを目指した。標的化合物としたポルフィリン多量体は、ポルフィリンのメソ位部分を、P-フェニレンを用いて連結させたものである。多量化は、ポルフィリン置換アルデヒドとピロールとの縮合反応によって逐次遂行した。本手法を用いて行えば、デンドリマー化合物でしばしば見出される、構造の一部が欠損したような不純物の混入を完全に防止できる。従って、物性評価には、構造が明確な物質を供する事が可能となった。即ち、アルデヒドが置換したポルフィリンを順次合成していき、単量体、5量体、21量体とし、最後に85量体を目指した。これらと並行して、ポルフィリン多量体に於いてしばしば観察される光集光機能にも注目を行い、評価を行った。
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