研究概要 |
左巻きヘリセンジオールとテストステロンとをアセトン-ベンゼンの混合溶媒から再結晶し,包接結晶を初めて単離・精製することに成功した。ラセミ体又は右巻きヘリセンジオールとテストステロンでは包接現象は見られなかった。また,左巻きのヘリセンジオールはテストステロン以外の類似のステロイド類を結晶中に取り込まないことがわかった。これらの結果はヘリセンジオールの不斉がステロイドの形状を認識していることを意味している。 包接結晶のX線構造解析を行ったところ,テストステロンの分子同士が水酸基とカルボニル基の間で水素結合で結びつきhead-to-tail型の超分子構造を形成していることがわかった。ヘリセンジオールの2つの水酸基はdisorderしており,その内の一つは隣のヘリセンと水素結合を形成し,他の水酸基はテストステロンの水酸基と水素結合を形成していた。結晶中ではヘリセンジオールとテストステロンはa軸方向に重なっていて,ファンデルワールス力でゲスト分子の形を認識しているものと考えられる。この包接結晶では,左巻きヘリセンの二面角は46.1度と大きく開いていることを明らかにした。
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