研究概要 |
研究代表者らはアルコール性水酸基を持ったらせん分子であるヘリセンジオールがバネのように伸び縮みしてゲスト分子を認識することを初めて明らかにした。このヘリセン分子の機能・物性の違いを解明するために,本年度はフェノール性水酸基を持ったヘリセン分子の合成を行なった。合成には,ベンゾジチオフェンジアルデヒドを出発物質として2工程でジメトキシ基を有するヘリセンの合成を行ない,ついでメチル基を脱保護することにより,フェノール性水酸基を有するヘリセンの合成に成功した。なお,これらのヘリセン分子はいずれも新規物質である。 X線結晶構造解析の結果,ジメトキシヘリセンはラセミ混合物で存在することがわかり,クリスタルピッキングによって光学分割が可能であった。結晶中では,同じらせんの向きを有するヘリセン同士が積み重なり,バネ状に自己集合した超分子構造を形成するという興味ある現象を見いだすことができた。また,フェノール性水酸基を持ったヘリセンはアセトンをゲスト分子として包接し,クラスレートを形成することも明かにすることができた。以上のように,ヘリセン分子に特有の新たな機能・物性や構造を明らかにすることに成功した。
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