研究概要 |
1.チオフェンのβ位を完全にアルキル置換することでα-β結合生成を防ぐことで,三価鉄による酸化的オリゴマー化が可能となり,オリゴチオフェン6量体を出発原料として72量体までの一連のオリゴマーの合成に成功した。72量体のオリゴチオフェンは27.9nmの分子長を有すると予想され,完全に単分散性の共役化合物としては世界最長で,これまでの分子長を大きく上回っている。 2.オリゴチオフェン4量体と8量体のC60連結化合物に金電極との接合のためのジスルフィド基を導入した化合物を合成し,修飾金電極を作成した。4量体化合物は,金電極状に密な膜を形成しなかったが,8量体化合物からは緊密な自己集合単分子膜が得られた。この修飾金電極を用いて光起電力を測定したところ,電子キャリアとしてのメチルビオロゲンの存在下,顕著な光陰極電流が観測され,オリゴチオフェンが単分子光電池系のドナー部位としてだけでなく電荷キャリア移動の分子ワイヤとして高い機能を有していることを明らかにした。 3.末端に蛍光特性の高いピレン部位を有する一連のオリゴチオフェン誘導体を合成し,基本的な物性と電界発光(EL)素子の発光材料としての応用に関する研究を行った。オリゴチオフェンの末端にピレンを導入することで,薄膜性能の向上,発光の著しい長波長化,オリゴチオフェンの鎖長に依存した正孔輸送性から電子輸送性までの特性変化なとが明らかとなり,これらを発光材料として用いたEL素子において黄色から橙色の発光が達成された。 4.べンゾトリチオフェン誘導体からトリフェニレノトリチオフェンの合成に用いた急速真空熱分解(FVP)法によって,トリフェニレノトリチオフェンのトリベンゾ縮環化合物の合成に成功した。また,ジベンゾチアコラニュレンの合成にも初めて成功した。これらは特異的なボール型の分子構造とconcave-convex積層型の結晶構造を有すると予想され,それらの構造と物性の解明を急いでいる。
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