研究概要 |
1.種々のピレン置換オリゴチオフェンを合成し,これらがITOを陽極,LiF/Alを陰極とする有機電界発光素子において正孔輸送性の発光材料として高い機能を有することを明らかにした。有機単層型EL素子としては極めて高い1,800 cdの輝度を得ることができた。 2.ナノメートルサイズの分子長を有する長鎖オリゴチオフェンが電子移動担体分子ワイヤとして実際に機能するかどうかの評価を目的として,一方のα末端にポルフィリンを,他方フラーレンを連結した三元系化合物を設計し,合成に成功した。蛍光量子収率と蛍光寿命から見積もられた電子移動速度の減衰葦因子はポリp-フェニレン系を大きく下回り,ポリエンやポリインに匹敵する値となり,オリゴチオフェンが分子ワイヤとして優れた機能を有することを明らかにした。 3.ワイヤ型の剛直なオリゴチオフェンに対し,より柔軟な形でπ共役系を連結した2,3-チエニレン=エチニレンオリゴマー-フラーレン連結分子を合成し,オリゴマー部がコイル型配座をとることおよびこの配座に起因して無極性溶媒中でも光誘起電子移動が部分的に起こることを明らかにした。 4.フラーレン連結オリゴチオフェンが高効率の光誘起電子移動を行うことに着目して有機単層型の太陽電池を作成し,光電変換効率を評価したところ,オリゴチオフェン16量体-フラーレン連結系で,4.8%と高い光電変換量子収率を得た。 3.フラーレン連結オリゴチオフェンの対応するジスルフィド化合物および新たに開発した堅固な自立型トリチオールアンカーを有する連結化合物を合成して,それらの金電極上の自己集合単分子膜の作製および光電気化学特性の評価を行った。自立型アンカーの使用はスルフィドアンカーの約100倍の光電流を示し,その高い有用性が明らかとなった。また,オリゴチオフェン鎖長の伸長に伴う効率の向上を観測し,最高35%の光電変換量子収率を達成した。
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