研究概要 |
金属錯体を構成単位とする集合体は,磁性・伝導性・光物性等様々な物性が発現する物質群であり,この物性発現には分子内および分子間の電荷移動相互作用が重要な役割を担っている.この強い電荷移動相互作用をもつ電子系(集積体)に電子移動・スピン平衡による動的現象を付加することができれば,外場応答磁性体など様々な多重機能を集積体に付与することが可能となる.本研究ではシアン化物イオン架橋環状4角錯体を合成し,その混合原子価状態における金属イオン間の相互作用(電荷移動相互作用)について研究を行った. (1)シアン化物イオン架混合原子価錯体の合成 シアン化物イオン架橋骨格[Fe(II)_2Fe(III)_2(μ-CN)_4(bpy)_8](PF_6)_6(1)および[Ru(II)_2Fe(III)_2(μ-CN)_4(bpy)_8](PF_6)_6(2)(bpy=ビピリジン)を合成し,電解酸化により混合原子価状態を持つ錯体を合成した. (2)金属イオン間の電子的相互作用の解明 電解酸化により合成した混合原子価錯体は,4角骨格構造の中で金属イオンが以下の酸化数をもつ.[Fe(II)_2Fe(III)_2(μ-CN)_4(bpy)_8](PF_6)_6(1)および[Ru(II)_2Fe(III)_2(μ-CN)_4(bpy)_8](PF_6)_6(2).これら錯体は遠赤外領域にMMCT吸収をもち金属イオン間の電子的相互作用を表すH_<AB>がそれぞれ1270cm^<-1>,1410cm^<-1>のクラスIIに属する混合原子価錯体である事が明らかとなった.また,酸化状態の変化に伴うCN伸縮振動ピークの解析(電解IRスペクトル)により,電子移動の速さが赤外のタイムスケールより遅いことを明らかとした.
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