研究概要 |
二座配位性ポルフィリンを補助配位子とする有機金属錯体の構造や反応は従来の窒素二座配位子にはない特徴を示す。本研究ではポルフィリンの有機Pd錯体の反応挙動を明らかにした。 1.二座配位性ポルフィリンパラジウム錯体とオレフィンとの反応挙動の解明 二座配位性ポルフィリンのメチル(クロロ)Pd錯体(1)、メチル(アセトニトリル)Pd錯体(2)、アセチル(クロロ)Pd錯体(3)、メチル(カルボニル)Pd錯体(4)に対するオレフィンの反応について検討した。(1)はノルボルナジエン(NBD)と反応しないが、(2)は重合生成物を与える。(3)および(4)の反応では1分子のNBDにPd-Ac結合がexo付加した生成物が得られた。付加は可逆的に起こる事が明らかになった。スチレンやアクリル酸エステルはカチオン性Pd錯体(2)、(4)と反応する。特に、(1)を非配位性溶媒中で過塩素酸銀で処理して得られる配位不飽和なカチオン性Pd錯体(5)とは極めて迅速に反応した。Pd-Me結合がアクリル酸エチルに対して2,1-付加を起こした錯体(6)はエステルのα炭素がPdと結合しているが、Pdがβ炭素、γ炭素に転位した錯体(7)、(8)への反応過程を観測する事に成功した。更に、錯体(8)はもう一分子のアクリル酸エチルに2,1-付加を起こし、錯体(9)を与えること、更に錯体(9)からPdがβ炭素へ転位した錯体(10)が生成することが明らかになった。スチレンも同様に2,1-付加を受けるが、π-ベンジル錯体として安定化される為、Pdの転位や第2のスチレン分子の挿入は起こらなかった。このπ-ベンジル錯体はX線結晶構造解析によって構造を確定すると共に、その動的挙動についても明らかにした。 2.二座配位性ポルフィリンロジウム錯体の合成 ポルフィリンの(CO)_2Rh錯体、(NBD)Rh錯体を合成し、そのX線結晶構造を明らかにした。 3.低原子価Pd錯体の発生と反応性の検討 ポルフィリンのCl_2Pd(II)錯体の還元によるPd(0)錯体の生成とその反応について検討を加えた。臭化アリル、臭化ベンジル、ヨウ化メチルとの反応で有機Pd(II)ポルフィリンが得られることを見出した。
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