研究概要 |
二座配位性ポルフィリンを補助配位子とする有機金属錯体の構造や反応は従来の窒素二座配位子にはない特徴を示す。本研究では他の窒素2座配位子と比較してその特徴について明らかにした。 1.二座配位性ポルフィリンの(π-アリル)パラジウム錯体の反応挙動の解明 Pd錯体の場合、窒素2座配位子は対応するリン配位子に比べて、解離が起こりやすいことが知られている。(π-アリル)パラジウム錯体のπ-アリル基の異性化反応を取り上げて、Pd-N結合の強さを見積もった。通常の窒素2座配位子のPd錯体と同様にπ-アリル基の回転異性化はPd-N結合の切断を伴うメカニズムで進行するが、π-ブテニル基の場合にはリン配位子の場合に一般的に見られるPd-C結合の切断を伴うσ-π変換メカニズムで異性化が進行することを見出した。ポルフィリン配位子の環電流効果により、π-アリル基の立体配置を正確に決定できる事を明らかにし、他の配位子にはない特徴として論文で報告した。 2.二座配位性ポルフィリンパラジウム錯体の配位化学の解明 本研究室で開発した二座配位性ポルフィリンは金属-窒素結合とピロール平面が20度以上の角度を持つという特異な配位構造を持つ。この二座配位性ポルフィリンを有機金属化学反応に応用するための基礎研究として、配位結合の強さを見積もることを目的とした。エチレンジアミンと二座配位性ポルフィリンの混合配位子を持つジカチオン性パラジウム錯体を合成し、その性質について明らかにした。対アニオンが塩素イオンか過塩素酸イオンかによってUV-VISスペクトル、NMRスペクトルに違いがみられた事から、(i)塩素イオンがパラジウムに配位した5配位型錯体の生成、(ii)塩素配位子のアピカル位-エカトリアル位配位座変換が起こっていることを明らかにした。更に、メタノール中で大過剰量のエチレンジアミン(0.5molL^<-1>)をジカチオン性Pd錯体に加えた際の、配位子交換反応について検討し、2,2'-ビピリジンのPd錯体に比べて二座配位性ポルフィリンのPd錯体は10^3倍安定である事を明らかにした。
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