研究概要 |
ポルフィリンの有機金属錯体は有機金属化学の分野では特殊な錯体であった。しかしながら、機能性物質としてのポルフィリンの有用性を考えた場合、二座配位性ポルフィリンを補助配位子とする有機金属錯体の構造や反応は極めて興味深い。本研究では、二座配位子としてN(21),N(22)-架橋ポルフィリンを用いてPd錯体の構造と反応について検討した。 1.二座配位性ポルフィリンPd錯体の配位化学の解明 窒素系の配位子はポスフィン系配位子と比べて金属との結合が一般に弱い。ビスピリジン等の従来の窒素二座配位子と比べて、二座配位性ポルフィリンとPdとの結合は速度論的に極めて強固であることを見いだした。特に、ポルフィリンのNMRにおける環電流効果やUV-visが金属上での構造、反応を明らかにする上で有効であることを示した。 2.二座配位性ポルフィリンの(π-アリル)Pd錯体の反応挙動の解明 (π-アリル)Pd錯体をアリルスズとの反応によって合成し、π-アリル配位子の配位ダイナミクスを明らかにした。このシス-トランス異性化はポルフィリンの窒素が1つ解離することによって起こるが、その活性化エネルギーはビスピリジンの(π-アリル)Pd錯体と比べて、20kJ mol^<-1>以上大きい。 3.(ポルフィリン)メチルパラジウム錯体に対するCO、イソシアニド、アルケンの挿入反応 Pd-C結合に対するCO、イソシアニド、アルケンの挿入反応を検討し、(アシル)Pd錯体、(メチルイミノ)Pd錯体を高収率で単離した。スチレン誘導体との反応で得られた(π-ベンジル)Pd錯体はポルフィリン特有の立体化学的要請によって、トランス型とシス型の2つのコンフォメーションをとることを明らかにした。 4.二座配位性ポルフィリンロジウム錯体を合成し、その分子構造を明らかにした。
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