研究概要 |
(1)気水界面での二次元集積型錯体の合成 2,6-ビス(オクタデシルベンズイミダゾリル)ピリジン(L18)を有し、かつ配位能をもつ錯体として[Ru(L18)(CN)_3]^<n+>の錯形成について検討した。この錯体は気水界面において良好なLB単分子膜となることがわかったπ-A曲線において,純水中での極限面積は0.65nm^2/分子であったが,下層液に金属イオンを含む溶液を用いた場合には0.75^-0.78nm^2/分子となり,分子極限面積の拡大が観測され,錯形成が界面で起ったことを示している.また、この単分子膜は種々の基板上にY型膜として累積できることがわかった。LB膜の吸収スペクトルはπ-π*吸収帯の長波長シフトが見られ,分子間での会合があることを示している.FTIRによりシアノ基の伸縮振動は溶液からのキャスト膜の場合には2068cm^<-1>に見られる.LB膜でも純水から作成した場合には大きな違いはみられない.ところが,銅イオンを含む溶液を用いた場合には,IRのv(CN)が溶液中で混合して作成したキャスト膜(2103cm^<-1>)と界面でできる膜(2077cm^<-1>)と大きく異なる.これは界面では錯形成が規制された方向にしか起こらないことを示唆している.このことを調べるためにAFN観察を行ったところ,純水中からマイカ表面に引き上げて作成したLB膜ではテープ状会合体の形成が見られた.しかし,下層液が銅イオンを含む溶液から作成した場合では多孔性のモルフォロジーをもつ分子集合体が観測され,大きな変化が見られた. (2)固液界面でのアンカー基を有するビス(ベンズイミダゾリル)ピリジン配位子をもつ表面錯体の分子構築 水溶液中でのプロトン共役電子移動によるルテニウム錯体系での電位シフトを利用して,アンカー配位子としてジスルファイドと亜リン酸基を有する同じ炭素数のルテニウム錯体の基板表面選択性を評価した.異なるアンカー基の準合溶液中にAuおよびITO電極を同時に同じ時間浸けてそれぞれの電極応答をCVで測定したところ,ITO電極には亜リン酸基が,金電極にはチオールが選択的に吸着することがわかった.
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