研究概要 |
(1)気水界面での二次元集積型錯体の合成 2,6-ビス(オクタデシルベンズイミダゾリル)ピリジン(L18)を有する錯体[R_4N][Ru(L18)(CN)_3]^<n+>(R=Bu(1),Octadecyl(2))の表面集合状態について検討した。この錯体1および2は気水界面において良好なLB単分子膜となる。それぞれの分子極限面積は錯体1が0.65nm^2,錯体2が1.43nm^2と大きく異なる。錯体1の単分子膜を2mN/mの表面圧でマイカ上に写し取り原子間力顕微鏡(AFM)測定を行うと,平均長さ800nm幅50nm高さ1.0nmの短いテープ状のドメイン集合体ができることがわかった。一方,対アニオンに長鎖アルキル基をもつ錯体2をマイカ上に移しAFM観察したところ,均一な膜となっていることがわかった。そこで,錯体1と錯体2をある割合で混合したところ,分子極限面積は錯体1の割合が多いと,小さくなっていくことがわかった。割合の異なる錯体混合膜のAFM観察を行ったところ,錯体1と錯体2の割合が2:1のときにメゾスコピックなテープ状ドメインを形成することがわかった。これは,対アニオンの両親媒性の差により分子間相互作用を制御してドメイン構造を制御できたものと考えることができ,非常に興味深い。また,金属イオンによってモルフォロジーが変わることもわかった。 (2)摩擦力顕微鏡(FFM)による固体基板表面の観察 固体表面の幾何学的形状がどのように摩擦に反映されるかを調べるため、原子レベルで規則的なうね構造を持ったCaSO4(001)面について調べたところ、うねの方向が摩擦の異方性に明確に反映されることを見出した。分子の配列基板として用いられるハロゲン化アルカリ単結晶基板については、熱によるラフニングが起こる過程を原子レベルで追跡することができた。その結果、温度上昇に伴い、ステップエネルギーの異方性に基づくステップ形状の複雑化、単原子テラスの消滅によるステップエネルギーの減少、ファセットの消滅、最後に完全な粗面化が段階的に起こることを見出した。
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