研究概要 |
ターピリジル-Ru-キノン-アクア錯体([LRu(Q)(OH^2)]^<2+>)からの1段目のH^+解離ではキノンの種類によりヒドロキソアニオンを有する[LRu(Q)(OH^-)]^+あるいはヒドロキソラジカルを持つ[LRu(S)(OH・)]^+が生成する。[LRu(Q)(OH^-)]^+でも二つ目のH+解離が解離するとオキソーセミキノン錯体([LRu(S)(O)]^0)が生成する。[LRu(35-dbQ)(OH_2)]^<2+>(3,5-ジブチルキノン)をpH13の水中で放置すると[LRu(35-dbS)(O)]^0の結晶が析出した。アクア錯体の二つのH^+が解離して生成したオキソーセミキノン錯体はオキソ位とセミキノン骨格に二つのラジカルを有する3重項の錯体であり、X線構造解析の結果、Ru-O結合はRu-OH_2結合距離に比べて余り変化せず、Ru-O結合には多重結合性が低いことが判明した。さらに[LRu(S)(O)]^0は酸化剤としては機能しないが、その1電子酸化体は1,2-ジヒドロナフタレン等の環状ジエン化合物から水素ラジカルを引き抜く反応性を示した。また、一連のアコ-Cr-セミキノンおよびカテコール錯体の合成に成功し、Ru錯体同様に[LCr(S)(OH)]^+のH^+解離に供役してオキソアニオンからセミキノンへの電子移動が起こり、カテコルーオキソ錯体[LCr(C)(O)]^0が生成した。また、その酸化体はテトラハイドロフランからの水素引き抜き反応を示した。
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