研究課題/領域番号 |
12440191
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研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
尾高 雅文 理化学研究所, 生化学システム研究室, 研究員 (20224248)
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研究分担者 |
片山 葉子 東京農工大学, 農学部, 助教授 (90165415)
養王田 正文 東京農工大学, 工学部, 助教授 (50250105)
遠藤 勲 理化学研究所, 生化学システム研究室, 主任研究員 (00087470)
丹生谷 博 東京農工大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (60135936)
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キーワード | システインスルフェン酸 / システインスルフィン酸 / 非ヘム鉄タンパク質 / 翻訳後修飾 / ニトリルヒドラターゼ / チオシアネート加水分解酵素 |
研究概要 |
ニトリルヒドラターゼ(NHase)はシステインスルフィン酸(Cys-SO_2H)とスルフェン酸(Cys-SOH)というシステイン酸化体を非ヘム鉄配位子として有する新規金属蛋白質である。このシステイン酸化体を含む新規金属結合モチーフの機能を明らかにするため、本年度は以下の研究を行った。 (1)阻害剤による反応速度論的解析-イソブチロニトリル(IBN)はNHaseに対して数iMで競争阻害作用を示すことが報告されていた。その阻害効果を再検討したところ、NHaseはIBNとの反応によって不可逆的に失活し、Cys-SOHが酸化され、Cys-SO_2Hとなることが明らかになった。酸化条件をさらに詳細に検討し、酸化を引き起こしているのはIBN自体ではなく、その試薬中にわずかに含まれる他成分が反応していることを明らかにした。使用したIBNの純度は98-99%であることから、この成分は数十nMのオーダーでNHaseに作用する大変高い親和性を持つことが考えられる。この成分をIBNの試薬中から逆相クロマトグラフィーによって単離しNMRスペクトルを測定した結果、IBNの構造に良く似た枝分かれ状の側鎖をもつことが解った。 (2)αCys114-SOHは酵素活性に必須である-従来、鉄型NHaseは安定化剤であるn-酪酸を必要とすることが知られていたが、この原因は全く判っていなかった。我々は、この失活がシステインリガンドの空気酸化に起因するのではないかと考えた。n-酪酸の存在、非存在下でのFe型NHaseの酵素活性および活性中心のシステインリガンドの酸化状態を好気および嫌気条件でモニターすることにより、n-酪酸非存在下での酵素の失活はCys-SO_2Hへの空気酸化が原因であること、n-酪酸はこのαCys114-SOHの酸化を防ぐことで酵素を安定化していることを明らかにした。 (3)NHase相同蛋白質における翻訳後修飾の保存性-Co型NHase(Rhodococcus rhodochrous J1由来)およびNHaseと高い相同性を有するThiobacillus thioparus THI115由来チオシアネート加水分解酵素について翻訳後修飾の検討を行なった。その結果、どちらの酵素においてもCys-SO_2Hへの酸化は保存されていることがわかった。このことから、NHaseに類似の蛋白質に共通の性質であり、Rhodococcus sp.N-771由来Fe型NHaseの場合と同様に、酵素活性の発現に重要な働きをもつことを強く示している。
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