研究課題/領域番号 |
12440194
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
三谷 忠興 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 教授 (50010939)
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研究分担者 |
加藤 昌子 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (80214401)
安 正宣 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (10249956)
大久保 貴志 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (90322677)
下田 達也 セイコーエプソン(株), テクノロジープラットフォーム研究所, 所長・客員教授
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キーワード | EL素子 / エレクトロルミネッセンス / 有機レーザ / Alq_3 / 有機金属錯体 |
研究概要 |
有機薄膜を用いたELレーザ開発はいま産学界の関心の的となっているが、まだ成功したとの報告はない。その最大の要因は、レーザ発振に必要な励起子密度が得られていないことによるものと考えられる。この問題を解決するには、必然的に発光層内での電子およびホールの密度の増加と高い発光効率とともに発光寿命の最適化が要求される。前者の解決策の一つとして、ブルームライン方式を用いた高速パルス発光機構による高速化を行いその有用性を実証した。後者については、まず、Alq_3をモデルとして、キノリノール配位子の代わりに硫黄原子を骨格に含んだ配位子を用いてEL材料の合成を行った。硫黄原子は軌道の広がりが大きいため隣接分子との重なりが大きく、移動度の増大につながるものと期待した。そこで硫黄を含んだ配位子2-(o-hydroxyphenyl)thiazole (PhTZ)を用いた新規亜鉛2核錯体を合成した。この錯体はZn_2(PhTZ)_4の組成を有しPzTZ配位子の一部がスタックした二次元積層構造を有し、この錯体は発光波長497nm青色発光を示し、EL素子は最高輝度1050cd/cm^2を示した。さらに、この配位子を用いてAlとの錯体を合成すると発光波長の異なる結晶構造を有する2種類のEL素材が得られ、且つ両者が共存することから、白色のELを持つ素材が得られたことは注目に値する。また、いくつかのPhTZ誘導体を新たに合成し、多核構造を有する新規亜鉛錯体を合成し、X線構造解析にて結晶構造を決定した。 これら新規亜鉛錯体に関する研究結果に関して次に示す。まず、Alq_3および新規単核錯体Alptz_3、Alppo_3に関する研究から、中心金属周りの配位結合距離の分布がアモルファス化という点では重要であり、更に結合距離の違いによって生じる準安定相がそれぞれ異なる発光を示す事が明らかになった。また中心金属をアルミから亜鉛で交換する事によってZnppo_2、Zn_2ptz_4とZn_3ppo_6という新規オリゴマー錯体の合成に成功し、なおかつこれらオリゴマー錯体に関してπ-πエネルギギャプのワイドコントロールが可能である事が明らかになった。更に異なる二種類の配位子を含むZn_4ppo_2q_6という新規化合物を合成し、有機EL材料としての評価実験を行った。その結果、オリゴマー金属錯体においては通常の有機高分子では考えられない発光特性を示す事が明らかとなった。すなわち、通常の有機高分子では発光特性が異なる二種類のユニットを化学結合により連結した場合、最もエネルギーの小さいユニットからのみ発光が観測されるが、オリゴマー金属錯体においてはそれぞれのユニットが発光核となり異なる色の発光が共存することが明らかになった。これらの結果を踏まえると、オリゴマー錯体でスピンー軌道相互作用が大きい金属の導入、またオリゴマー錯体で二種類以上の金属と二種類以上の配位子を導入する事によって、今まで得られていない白色発光体に関しての新しい設計指針を提案できる。
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